
SPECIALIZATION
オートファジー✕認知症
Dementia and Autophagy
オートファジーと認知症
認知症とは?
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指します。(日本厚生労働省より)
主な症状
- 記憶障害(新しい情報を覚えられない、過去の出来事を思い出せない)
- 判断力や思考力の低下(計画や決断が難しくなる)
- 言語障害(言葉が出てこない、言葉の意味を理解できない)
- 見当識障害(時間や場所、人の認識ができなくなる)
認知症は、加齢に伴う正常な物忘れや、うつ病、せん妄とは異なります。認知症の多くは、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病・レビー小体型認知症といった中枢神経の変性疾患、あるいは脳梗塞による血管性認知症が占めています。
*大切なことは物忘れとは異なり、認知症では日常生活に支障をきたすという点です。
オートファジーがもたらす認知症への効果
認知症の中でも特にアルツハイマー病やパーキンソン病といった中枢神経の変性疾患は、異常タンパク質の蓄積や神経細胞の機能不全によって引き起こされます。これらの疾患におけるオートファジーの役割は以下の通りです。
異常タンパク質の除去
- アルツハイマー病: アミロイドβやタウタンパクの蓄積を除去し、神経細胞の保護に寄与します。
- パーキンソン病: α-シヌクレインの分解を促進し、毒性を軽減します。
ミトコンドリアの品質管理
ミトコンドリアの損傷は神経細胞に悪影響を及ぼします。オートファジーは損傷したミトコンドリアを選択的に分解(マイトファジー)し、細胞のエネルギー供給と神経細胞の健康を維持します。
神経細胞の保護
オートファジーは細胞のストレス応答を助け、神経細胞の変性を遅らせる効果があります。
脳血管障害とオートファジー
脳血管障害の主要な原因である動脈硬化とオートファジーの関連も注目されています。
動脈硬化の制御
オートファジーは血管内皮細胞やマクロファージ内の過剰な脂質を分解し、動脈硬化の進行を抑制する役割があります。オートファジーが異常をきたすと、これらの細胞の機能が損なわれ、動脈硬化が進行します。
脳血管性認知症への影響
動脈硬化による血流障害とオートファジー異常が組み合わさることで、脳血管性認知症のリスクが増加します。特に高血圧との相互作用が重要とされています。
今後の可能性
オートファジーは、異常タンパク質の除去、ミトコンドリアの品質管理、細胞ストレス応答を通じて神経細胞や血管機能を保護する重要なプロセスです。その異常は神経変性疾患や脳血管障害の進行を助長する可能性があり、治療のターゲットとしての可能性が期待されています。
ABOUT
私たちについて

高橋利匡/Toshimasa Takahashi
M.D., Ph.D
トロント大学医学部招聘教授
医療法人社団 たかはしクリニック理事
大阪医科大医学部卒業後、総合内科医として従事。その後、糖尿病、老年病、消化器病など専門的な分野において日本、アメリカ、カナダで医学博士として研究に従事。2024年11月よりトロント大学医学部招聘教授として勤務。