
AUTOPHAGY
オートファジーとは?
What's Autophagy
オートファジーとは?
オートファジー(autophagy)は、細胞が自身の構成要素(タンパク質や細胞小器官など)を分解・再利用する仕組みで、「自己(auto)」と「食べる(phagy)」に由来する言葉です。このプロセスは、細胞内の老廃物や損傷した物質を取り除き、細胞の健康を保つために重要です。
History of Autophagy
オートファジーの歴史
オートファジーは、1960年代にベルギーの生物学者 クリスチャン・ド・デューブ(Christian de Duve)によって発見されました。彼は細胞内のリソソーム(細胞の不要なものを分解する器官)を研究する中で、この自己分解システムの存在に気付きました。その後、1990年代には大隅良典(Yoshinori Ohsumi)教授が、酵母を用いた研究でオートファジーの仕組みを解明し、その功績が認められ2016年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。現在、オートファジーのメカニズムは老化や病気の予防に応用できるとして、研究施設をはじめ、大学や企業などでも研究が進められている注目の分野となっています。
Roles of Autophagy
オートファジーの役割
1. 細胞の健康維持
(細胞のお掃除)
細胞の中には、古くなったり壊れたりしたタンパク質や細胞の部品(細胞のエネルギー工場であるミトコンドリアや、小さな器官)があります。これらをそのまま放置すると、細胞の働きが悪くなります。オートファジーは、こうした「使えなくなったもの」を分解・処理して、新しいものに作り替える働きをしています。
2. エネルギー補給
(飢えたときの非常食)
食事ができないときや、エネルギーが足りなくなったとき、細胞は自分の中にある不要なものを分解してエネルギーに変えることができます。これによって、私たちは食事を取らなくても、しばらくの間元気を保つことができます。
3. ストレス対策
(細胞を守る防御システム)
紫外線、ウイルス、酸化ストレスなど、細胞にダメージを与える要因はたくさんあります。オートファジーは、細胞の中のダメージを受けた部分を修復したり、ウイルスを分解して感染を防ぐ役割を果たします。
4. 老化を遅らせる
(アンチエイジング効果)
細胞が古くなったり傷ついたりすると、老化が進みます。オートファジーがしっかり働くと、不要なものが取り除かれ、細胞が若々しい状態を維持しやすくなるため、老化のスピードを遅らせる可能性があります。
5. 病気の予防
(健康を守る働き)
オートファジーが正常に機能することで、アルツハイマー病やパーキンソン病などの脳の病気、がん、糖尿病などの生活習慣病のリスクを減らす効果が期待されています。
Autophagy and Ageless Living
オートファジーとエイジングレスの関係
オートファジーとは、細胞が自らをきれいに保つための巧妙な仕組みであり、損傷したタンパク質や不要な細胞小器官を分解・再利用する「細胞のリサイクルシステム」です。この驚くべき機能は、老化やさまざまな疾病と密接に関係しています。老化が進むと、細胞内に損傷物質が蓄積し、肌のたるみ、筋力低下、認知機能の衰えといった変化を引き起こします。また、これらの老廃物は細胞内に留まらず、血液や体液を循環し、さらなる健康リスクをもたらします。こうした老廃物の細胞内への取り込みを促し、分解することは、老化や疾病への重要なアプローチとなります。
さらに、アルツハイマー病やパーキンソン病、がん、糖尿病といった疾患も、細胞内外の不要物の蓄積が発症や悪化の要因となります。オートファジーは、これらの原因物質を効率的に除去し、細胞の健康を保つだけでなく、再生を促進し、炎症を抑え、エネルギー代謝を最適化することで、老化や疾病の進行を効果的に抑える役割を果たします。この機能を活性化することで、健康で活力に満ちた未来への可能性が広がります。
Diseases Related to Autophagy
オートファジーと関連のある疾患の例
オートファジーは、細胞が不要なタンパク質や損傷した細胞成分を分解・再利用する仕組みで、健康維持に不可欠な役割を果たします。この機能が低下すると、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患、がん、糖尿病、感染症、自己免疫疾患など、多くの病気の発症や進行に関与すると考えられています。また、老化や動脈硬化などの加齢関連疾患にも影響を与え、オートファジーの適切な調整が健康寿命の延伸につながる可能性があります。
■神経変性疾患
アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)
■ガン
膵癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、大腸癌、脳腫瘍、肝細胞癌、白血病・リンパ腫
■感染症
結核、サルモネラ、リステリア、インフルエンザ、SARS-CoV-2、HIV、マラリアなど
■炎症性腸疾患
クローン病、潰瘍性大腸炎
■自己免疫疾患
全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチなど
■代謝疾患
肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪肝(NAFLD)
■加齢関連疾患
老化、サルコペニア、動脈硬化、加齢黄斑変性、骨粗鬆症
■骨疾患
骨硬化症、ページェット病
■心血管疾患
動脈硬化、心不全